2015-07-04 19:37:03
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僕は生まれつき視力が弱かった。
世界は常に滲んでいて、空気は渇いていた。
砂漠、それが、今、僕のいる場所だ。
子供の時、両親と飛行機に乗ったのは覚えている。
途中、悲鳴と轟音に見舞われ、次に気付いた時は、僕は1人だった。
黒と赤と熱に肉の焼ける臭いの下、僕は言葉を忘れていた。
そこへ通り掛かった商人に拾われ、僕は助かった。
わからない言語を浴び、言葉が出なくなった僕は、意志疎通の手段として絵を描いた。
考えていることを知って欲しくて、殺されたくなくて、生きるために必死になって、帰ることもままならず、僕はそのまま、この国で1人で生きてきた。
あれから20年。
今は、砂漠にある湖都の王宮絵師として住み込ませてもらっている。
果たして、視力の弱い僕が絵を描けるのか。
と、皆、最初は疑い、信用してくれない。
だが、僕の心の海は色鮮やかに波打ち跳びはねる。
モノの姿形がはっきりとわからないからこそ、空想が芽吹くこの渇いたキャンパスに。
僕は筆は使わない。
指で撫でるように引っ掻くように押し付けるように欲望を滑らせる。
そうして画いた絵を、皆は褒めたたえてくれる。
「ヤナギ、貴方の絵は素晴らしいわ。今にも飛び出して私に襲い掛かりそう。ああ、堪らないわ」
特に女王は僕の絵を褒めてくれる。
僕の目に映るのは、滲んだ色の洪水と褐色の欲の洪水。
鼻を刺激する芳しい香りに混じる体液の匂いに包まれる。
僕の口に首筋に鎖骨に這う温かい柔らかな感触。
のしかかる重みに抗うこともなく、僕は滲んだ世界に噛み付いた。
てな感じの話の主人公です。まだ完結してないんで、微妙なんですが。
完結したら、小説家になろうにUPしようと思います。
今回、描いたのは、イメージ。
イメージ描かないと、話が書けない性分で…(汗
私の中で、こういうのが美青年だと思ってるらしいです。